おじいちゃん
世の中にはやり過ぎるのは良くないものが多い。何事もバランスが大切だ。
しかし、2つだけやり過ぎることがないことがある。
それは勉強と歯磨きだ。
これはおじいちゃんの名言である。
おじいちゃんは麻雀の名言、迷言もある。
•麻雀は一人でやってるわけじゃない。だから人を待たせるな。迷って打つな。
•3と7は大事にしろ。
•左手は出すな。全ては右手で行え。
•ミカンかけてるんじゃねぇ。
おじいちゃんは麻雀が大好きだった。だから気付いた時には我が家には麻雀部屋があって、全自動卓が1卓。毎週近所の若者とともに、徹夜で麻雀を打つ、打つ、打つ。
朝起きてランドセルを背負う前に打ってる人にコーヒーを出してから学校に向かった私であった。
おじいちゃんは面子が集まる前に必ず卓のメンテナンスをしていた。それを手伝うと少しだけ麻雀をさせてくれる。
そう、当時の私は年に1回、誕生日しか麻雀をしてもらえなかったわけである。
とにかく麻雀を愛して止まないおじいちゃん。当時は競技麻雀も知らず、ずっと家で打ち続けていた。
おじいちゃんはある日脳梗塞になり左半身不随になった。身体が思うように動かない。だけど退院したら、麻雀なら出来るだろうと本人も、家族も信じて疑わなかった。
そして、その日、麻雀がいつもの通りに行われた。あまりリーチをしないおじいちゃん、ロン、七対子、という発声。
開かれる手配。
そこには5つの対子のみ。
おじいちゃんは脳梗塞の影響で手配の半分しか処理出来なくなってしまった。
チョンボに気付いたおじいちゃん、お部屋に黙って引きこもってしまった。
それ以来、我が家の全自動卓が動くことはほとんどなくなってしまった。
おじいちゃんは長い長い闘病生活を数年前に終えて、今は空でゆっくり見守っていることだろう。
おじいちゃん、今の私なら一緒に卓を囲んでくれますか?
これは台湾の寺のでっかいブッダ。
おじいちゃんではない。